電気回路基礎U 第11週 講義内容とレポート課題
本日の内容
1.インピーダンスと電圧・電流の関係
2.インピーダンスとアドミタンス
5章 交流回路の解法
【先回の復習とポイント】
5−4 フェーザを応用して交流回路を解く
5−4−1 正弦波電圧・電流をフェーザ表示する
(1)電圧・電流フェーザの定義
・正弦波関数として定義される交流回路の電圧と電流を,複素平面上で反時計回りに角速度ωで回転している複素ベクトルv’,i’ の虚軸への投影v(t),i(t)と考えた
・そこで,我々も角速度ωで反時計回りに回転しながらベクトルv’,i’を見れば,2つのベクトルは偏角φを保って静止して見える
⇒ そこで,この静止している複素ベクトルを大文字を使って表現して,電圧フェーザV’,電流フェーザI’と呼び,その絶対値と位相角に注目することにした
(2)電圧・電流実効値の定義
・電圧フェーザ,電流フェーザを導入するにあたって,各フェーザの絶対値は元の瞬時値振幅の1/√(2)と定義し,それを実効値と呼ぶ
・実効値は,交流計器の指示値に一致する
5−4−2 フェーザを交流回路へ応用する
(1)フェーザに対する微分と積分オペレーション
・フェーザを使った瞬時値(振幅を√(2)倍し,ε^(jωt)を掛けて時間関数にして,その虚数部を取る)に対して微分・積分を行ってみた
⇒ フェーザを使った瞬時値に対して,微分はjωを,積分は1/jωをそれぞれ乗ずるだけのオペレーションに簡略化された
(2)RL直列回路とフェーザ図
・RL直列回路を例にとってフェーザを適用してみた
・電圧フェーザと電流フェーザの関係を複素平面上に描いたものをフェーザ図(ベクトル図)と呼ぶ
(3)インピーダンスと電流の絶対値と位相
・電流フェーザに対する電圧フェーザの関係(絶対値の比と位相の差)を示すフェーザをインピーダンスと呼ぶ
・単なる代数方程式を解くことでインピーダンスを求めることができ,インピーダンスを使って電圧に対する電流の絶対値の比と位相の差が明らかとなる
時間関数である交流電圧・電流を複素ベクトルを使って表現し,インピーダンスを求めることで電気回路を解くことを学んだ
⇒ 今週はインピーダンス・アドミタンスを自在に計算する手法を学ぶ
5−4 フェーザを応用して交流回路を解く 〜微分方程式を代数方程式で解く〜
【本節の目標】 交流電圧・電流を複素平面上のベクトルとして扱い,電流の解法を電圧ベクトルに対して大きさと位相が異なる電流ベクトルを求める問題へ帰着させる
5−4−3 インピーダンスと電圧・電流の関係
※ 以下でも,複素数にテキストで使っているベクトルを表すドット(・)冠の代わりに,’を付けて区別する。
(1)RLC直列回路の電圧降下とインピーダンスの関係
図5−11(a)のRLC直列回路を例にとって,回路素子に対する電圧降下から各素子のインピーダンスを検討してみよう。なお,各電圧降下,電流,インピーダンスに対するフェーザ図は図5−11(b)の通り。
【抵抗】 v_R = R i ⇔ V’_R = R I’: Z’_R = R
Z’_R I’ = R I’ =
Rε^(j0) I’ ⇒ I’に対してV’_Rは同位相である
【インダクタンス】 v_L = L d i/dt ⇔ V’_L = jωL
I’: Z’_L =
jωL
Z’_L I’ = jωL I’ = ωLε^(jπ/2)
I’ ⇒ I’に対してV’_Lはπ/2位相が進む
【キャパシタンス】 v_C = 1/C∫ i dt ⇔ V’_C
= 1/(jωC) I’: Z’_C =1/( jωC)
Z’_C I’ = (1/ jωC) I’ = (1/ωC)ε^(-jπ/2)
I’ ⇒ I’に対してV’_Cはπ/2位相が遅れる
以上の結果に対して,
インダクタンスとキャパシタンスのインピーダンス絶対値をリアクタンスと呼ぶ
X_L = ωLを誘導性リアクタンスと呼ぶ
X_C = 1/(ωC)を容量性リアクタンスと呼ぶ
リアクタンスの単位は抵抗と同様 Ω である
(2)合成インピーダンスと力率角
RLC直列回路の電圧方程式は,電源電圧V’と各電圧降下の和が等しいので,次式で与えられる。
V’ = V’_R + V’_L
+ V’C = {R + jωL
+ 1/(jωC)}I’ = (Z’_R + Z’_L
+ Z’_C)I’ = Z’ I’
回路全体のインピーダンスZ’は,本回路が直列回路なので各素子のインピーダンスの単純な和で表されている。
⇒ Z’を合成インピーダンスと呼び,図5−12のようにインピーダンスのベクトル図から力率角φが決定される
5−4−4 インピーダンスとアドミタンス
前項までで,電流フェーザに対する電圧フェーザの比(V’/I’)をインピーダンスフェーザZ’と定義した。
逆に,電圧フェーザに対する電流フェーザの比も定義でき,次式のようにアドミタンスY’と定義する。その単位は
S (ジーメンス)である。
I’/V’
= Y’ = 1/Z’
各素子に対するアドミタンスは次式のようになり,特に並列回路の解析に取り扱いが容易である。
Y’_R = 1/R, Y’_L = 1/(jωL), Y’_C = jωC
合成アドミタンスは各アドミタンスの和である。
[レポート課題]
(1) 例題5−4
(2) RLC並列回路に関してキャパシタンスCが可変の場合,I’をV’に対して45度位相を遅らせるための条件を求めよ。
(3) 例題5−5