電気回路T 第2週 講義内容とレポート課題
本日の内容
1.回路素子と電気回路
2.直流回路と交流回路,回路素子と接続,抵抗による電力消費
3.電気回路の過渡状態と定常状態
1章 回路素子と電気回路
【はじめに】
電気回路とは何か,何のためにどのような問題を取り上げ,その問題をどのような手法で解くか?
⇒ 「電気回路T」講義のPBL (Problem-Based Learning)
“電気回路とは何か?”を身近な例で示すことから出発する。電気回路の電源(直流電源と交流電源),回路素子(抵抗,コイル,コンデンサ),接続形態(直列接続,並列接続)を復習し,電気回路を“微分方程式”によって表現する。
電気回路に対して,“どのような問題を扱い”,“その問題解決のために何が必要か”を考える。一般的には与えられた回路に対してどれだけの電流が流れ,電力が消費されるかを知ることが解決となる。その場合,過渡状態の振る舞いなのか,定常状態での値を知るのかで,扱う方程式や解法手段が異なる。
1−1 電気回路とは? 〜直流回路と交流回路〜
電気回路とは,実際の電気配線状態を電圧(電圧源)・電流(電流源)・回路素子の組合せによって記号的に表した図であり,回路方程式という数式表現した方程式を解くことで,問題解決を達成する。
“問題解決”とは,一般的に「電源電圧が与えられた時に,どんな電流が流れ,どれだけの電力を消費するか」を知ることであり,それを“電気回路を解く”という。
抵抗 Rを負荷とする電気回路(図1.1)を例にとって議論してみよう。
【配線に使われる銅線の抵抗値 rl】
rl = ρl/S ,l :長さ
[m],S :断面積 [m2],ρ :抵抗率 [Ωm]
【オームの法則】
vS = (rl + R) i
【直流回路と交流回路に流れる電流】
idc = V / (rl + R) = I :直流電源の場合
iac = Vmax
sinωt / (rl
+ R) = Imax sinωt
:交流電源の場合
※例題1−1で抵抗(ここでは電球のフィラメント抵抗)の“非線形特性”を復習しておこう。
1−2 電気回路にはどのような素子があるか?
電気回路で扱う“線形回路素子”である抵抗(抵抗値R [Ω]),コイル(インダクタンスL [H]),コンデンサ(キャパシタンスC [F])に対して,各素子に電流が流れたとき,流れ込む電流に対して素子の両端では電圧が下がることから,回路素子による“電圧降下”と呼ばれる。
電圧降下の大きさは,抵抗では抵抗値と電流の積(交流電源では電圧と電流の位相は同じ),コイルではインダクタンスと「電流の微分」との積(同,電流に対して電圧は90度位相進み),コンデンサではキャパシタンスと「電流の積分」との積(同,電流に対して電圧は90度位相遅れ)となり,式(1.4)の関係が成り立つ。
1−3 回路素子を接続する 〜直列接続と並列接続〜
電気回路は回路素子の組合せと接続によって構成され,その形態には「直列接続」と「並列接続」がある。ここでは,回路素子の接続と電圧・電流の関係,複数の回路素子の合成について,図1.4をもとに抵抗を例にとって調べてみる。
【直列接続】 各素子に流れる電流は等しく,各素子に生じる電圧降下の和が合成素子の電圧降下となる。
【並列接続】 各素子に流れる電流の和が合成素子の電流となり,各素子に生じる電圧降下は等しい。
※例題1−2で少し複雑な回路に対する合成抵抗の求め方を復習しておこう。
1−4 電気回路はどのように電力を消費する?
【ジュールの法則】 抵抗R [Ω] に一定電流IR [A] がT [s] 間流れたとき,抵抗に発生する熱量(エネルギー)H [J] は
H = IR2 RT
で与えられ,電気の世界ではこのエネルギーに対する1秒当たりの消費エネルギーを“消費電力(電力)”と呼ぶ。
【抵抗による消費電力P】
P = H / t = IR2 RT /
T = IR2 R = VRIR
⇒ 抵抗による消費電力は,抵抗に生じる電圧降下と流れる電流の積で表される。
【平均電力Pと瞬時電力p(t)】 上述の抵抗に対する一定電圧VRと電流IRに対して,時間的に変化する電圧vR(t)と電流iR(t)に対しては,T [s]間のエネルギーHと単位時間当たりの平均電力Pは次式で与えられる。
H =∫0T R iR2(t)
dt =∫0T vR(t) iR(t)
dt
P = 1/T∫0T R iR2(t)
dt = 1/T∫0T vR(t) iR(t)
dt
特に,P右辺の被積分関数p(t) = vR(t) iR(t)
を“瞬時電力”と呼ぶ。
1−5 電気回路の過渡状態と定常状態とは?
(1)過渡状態とは?
スイッチを含む電気回路に対して,スイッチON/OFFにより電気回路の状態が変化し,次の状態に落ち着くまでの時間的に変化する現象を“過渡現象”と呼び,過渡現象が生じている期間を“過渡状態”と言う。
スイッチON後に十分な時間が経過して一定の状態(直流回路であれば一定の電流が流れ,交流回路であれば振幅と位相が一定の正弦波電流が流れるなど)が保たれ,それ以上の変化が生じない状態を“定常状態”と呼び,その場合の値を“定常値”(⇔過渡状態が生ずる前の値を“初期値”)という。
(2)微分方程式で回路動作を表現する
【過渡状態を解く】 電気回路の過渡状態を解く(ここでは,スイッチON後に流れる電流を解く)ためには,与えられた回路と電源電圧に対して,キルヒホッフの法則などを適用して電気回路を表す微分方程式を立て,電流を時間関数として解けばよい。
【RL直列回路の過渡現象】 図1.7のRL直列回路に対する“電圧方程式”は
vR(t) + vL(t) = Ri(t) + L
di(t)/dt = vS(t)
で表され,電流に関する時間微分項を含むので,微分方程式と呼ばれる。一般に,微分方程式は初期条件が与えられると一意に解が決まるので,ここではスイッチONの時点を時間t = 0と定義して,電流に対する初期条件i(0)を与えて微分方程式を解くことで,過渡現象を解くことができる。なお,vS(t)が交流電源の場合でも同様である。
次週以降では,“ラプラス変換”によってこの過渡現象を解くことを目指す。
[レポート課題]
(1) 例題1−1を解きなさい。
(2) 例題1−2を解きなさい。
(3) 例題1−3を解きなさい。
(4) 章末問題1.1を解きなさい。
(5) 章末問題1.4を解きなさい。
(6) 章末問題1.6を解きなさい。