電気回路T 第4週 講義内容とレポート課題
本日の内容
1.ラプラス変換と逆変換
2.微分方程式の解法へのラプラス変換の適用
3.ラプラス変換演習
3章 ラプラス変換の基礎
前回のラプラス変換とその基礎に引き続き,ラプラス変換によってs領域の代数方程式に変換された分数多項式を,“ラプラス逆変換”によって時間領域に戻すことを試みる。すなわち,微分・積分演算を含めた時間領域で記述される「微分方程式」を,ラプラス変換によってs領域の「代数方程式」に変換し,その代数方程式を解いて時間関数にラプラス逆変換することを,“微分方程式を解く”こととする。
ここでは,ラプラス逆変換は定義式による計算ではなく,基本的に前回導出したラプラス変換表を参照することで実現するが,その場合,s領域の分数多項式を部分分数に展開する必要がある。そこで,「ヘビサイトの展開定理」を学ぶ。さらに,現実的な(工学的な)応用を鑑み,「初期値定理・最終値定理」も併せて学ぶ。
3−3 ラプラス逆変換と微分方程式の解法
3−3−1 ラプラス逆変換の基本
ある微分方程式をラプラス変換してs領域の代数方程式を導出し,所望の変数F(s)について代数方程式を解いた結果を次式の分数多項式で表現したとしよう。
F(s) = N(s) / D(s)
ここで,D(s)はn次,N(s)は(n-1)次以下の多項式である。すなわち,分母の次数の方が分子の次数よりも大きい(これは,皆さんが扱う様々な物理現象に対する微分方程式で一般に成り立ち,このことを「プロパな分数多項式」と言ったりする)ものとする。
このF(s)を時間領域に再び戻してf(t)を求めることを,“ラプラス逆変換”と呼び,F(s) = L{f(t)}に対してL-1{・}を使って次式で表す。
f(t) = L-1{F(s)}
前回示したラプラス変換に対応する積分変換の定義式に対して,実際の逆変換式も存在するが,ここでは前回導出したラプラス変換表を参照してf(t)を求める。
そのためには,F(s)を部分分数に展開する必要があり,「ヘビサイトの展開定理」などを駆使すると便利である。
3−3−2 初期値定理・最終値定理
ラプラス変換された関数F(s)が与えられると,次のように対応する時間領域でのf(s)の初期値と最終値を逆変換することなく知ることができる。
(初期値定理) limt→0 f(t) = lims→∞ sF(s)
(最終値定理) limt→∞ f(t) = lims→0 sF(s)
これらは,電気回路などの初期状態(初期値)や十分時間が経った定常状態(定常値)を,ラプラス逆変換する前に求めることができる,大変便利な定理である。
3−3−3 ラプラス変換の微分方程式への適用
以上の準備に基づけば,
微分方程式 →(ラプラス変換)→ s領域の代数方程式へ
所望の変数について分数多項式解く →(ラプラス逆変換)→ 微分方程式の解
のルーチンによって,微分方程式を解くことができる。そこでは,多項式の四則演算のみを行っていることに留意しておこう。
次週では,“ラプラス変換”による微分方程式の解法を簡単な電気回路の過渡現象へ応用し,過渡現象の基本的な性質を学ぶ。
[レポート課題]
(1) 例題3−5と3−6を解きなさい。
(2) 例題3−7と3−8を解きなさい。
(3) 章末問題3.1と3.2を解きなさい。