電気回路T 第5週 講義内容とレポート課題
本日の内容
1.直流回路の過渡現象基礎 〜微分方程式と電気回路へのラプラス変換応用
2.直流回路に対する微分方程式とラプラス変換による解法
3.RL直列回路,RC直列回路
4章 微分方程式と電気回路への応用
対象とする電気回路に対する微分方程式を立て,与えられた電源電圧に対して時間関数としての電流を解くことが,電気回路の過渡現象を解くことのひとつである。本章では,基本的な直流回路の解析を通じて,電気回路の過渡現象を理解することを目的とする。
4−1 常微分方程式法とラプラス変換法による過渡現象の解法 〜RL直列回路に流れる電流を例にとって〜
テキスト図1.7のRL直列回路に対する微分方程式と初期条件を次式とする。
Ri(t) + L di(t)/dt = VS,
i(0) = 0
上式に対して,常微分方程式を解く手法(1年前期「電気・機械工学入門」にて学修済み,1年後期「常微分方程式」にて学修)と,先回までに学んだラプラス変換による解法の2通りで電流i(t)の過渡現象を解いて比較する。
どちらの方法にせよ,その解として
i(t) = VS/R
(1 -ε-R/L t)
を同等に得るが,実際に手で計算してみると,圧倒的にラプラス変換法を用いた方が簡単に解けることが分かろう。
以下では,ラプラス変換法によっていろいろな電気回路に対する微分方程式を解き,基本的な直流回路の過渡現象とその特徴を理解する。
4−2 基本的な直流回路の過渡現象とその性質
4−2−1 RL直列回路
前節で求めたRL直列回路に対する電流式から,その電流波形の過渡応答をグラフにしてみれば,テキスト図4.1のようになる。ここで,図4.1は,電流式の減衰項(εの項)のべき乗係数に対して,t = L/Rの整数倍の時刻に対する,電流の定常値(VS/R)への割合(%表示)を併記している。
図から,t = L/Rの時刻では,電流値は定常値の0.632(= 1 -ε-1)倍に達しており,このべき乗係数によるτ= L/Rを過渡現象の時間的特徴を表す定数として,“時定数”と呼ぶ。
この時定数は,次の2つの性質を有する。
1) 時定数の5〜6倍程度の時間が経過すれば,ほぼ定常値に達する(t = 5τで定常値の99.3%)。
すなわち,工学的な解釈としては,時定数の5倍程度以降は「定常状態」と考えることができる。
2) t = 0でのi(t)の傾きを持つ直線が定常値と交わる時点が時定数に一致する(図4.1参照)。
すなわち,電流の過渡現象を直線で近似するとすれば,定常値に達する時間が時定数である。
4−2−2 RC直列回路
テキスト図4.2のRC直列回路の過渡現象を解析してみる。回路の電圧方程式は
Ri(t) + 1/C∫i(t) dt = VS
と与えられるので,vC(0) = 0の初期条件で解けば,電流i(t)およびコンデンサ両端の電圧vC(t)は次のようになる。
i(t) = VS/Rε-1/RC t , vC(t) = VS(1 -ε-1/RC t)
上式から,前節と同様に考えて,RC直列回路の時定数はτ= RCとなる。
なお,電流の初期値はt = 0を代入してi(0) = VS/Rとなり,これは「スイッチ投入直後の初期電流※」である。
この現象は,vC(0) = 0の初期条件では,回路はスイッチ投入直後にコンデンサが見かけ短絡(C = 0)されて電源とRだけとなり(その結果,初期電流はVS/Rとなる),その後コンデンサに電荷が溜まるにつれ,電源とコンデンサ電圧の差(VS – vC(t))が抵抗に掛かって電流が流れると考えれば良い。
※ 厳密にはi(0+) = VS/Rとすべきである。詳細はテキスト内容を参照のこと。
4−2−2 LC直列回路
4−2−3 RLC直列回路
LCおよびRLC直列回路に関しては,学年進行に従う電気回路の講義で改めて詳細を学修します。ここでは,「電気回路に対する微分方程式をラプラス変換で解く」の演習と,その性質・概念の基礎を説明することとします。
[レポート課題]
(1) (4.1)式をラプラス変換で解き,(4.12)式を導出しなさい。
(2) (4.17)式およびその次の初期条件をラプラス変換で解き,(4.20)および(4.23)式を導出しなさい。
(3) 図4.3のi(t)の波形に対して,t = 0での傾きを持つ直線が定常値(= 0)と交わる時点が時定数であることを示しなさい。
(4) (4.27)と(4.28)式をラプラス変換で解き,(4.33)および(4.34)式を導出しなさい。そして,VS = 1, L = C = 1として,i(t)とvC(t)のグラフを横軸に時間を取ってグラフ用紙に描きなさい。
(注意)縦軸と横軸のスケールを明記すること。