電気回路T 第8週 講義内容とレポート課題

 

本日の内容

1.交流回路の定常状態とは?

2.正弦関数の合成による基本的な交流回路の定常電流解析

 

 

5章 交流回路の解法

【はじめに】

講義前半では,直流電源を持つ各種電気回路の過渡現象を学んだ。

 ⇔ 一方,家庭等の身近な電源は交流電源(商用電源)である。

交流電源を用いた場合の電気回路に対しては,定常状態での特性解析が重要な課題となる。

 ⇒ ある電気回路に電圧を印加した時,どのような電流が流れ,どれだけの電力を消費しているか?

講義後半では,複素数を使ったフェーザ法によってこの課題を解決する。

 

 

5−1 交流回路の定常状態

(1)RL直列回路を例にとって,直流回路と交流回路の電流をラプラス変換で解き,両者を比較してみる

【直流回路】 R i_dc(t) + L {d i_dc(t)/dt} = V_S

 

【交流回路】 R i_ac(t) + L {d i_ac(t)/dt} = V_m sinωt

 

ラプラス変換によって上記2式を解くと,各電流は過渡現象を含んで次式で表される。

 i_dc(t) = V_S/R {1−ε^(R/L t)}

 

 i_ac(t) = V_m/{(R^2 + (ωL)^2)} {sin(ωt +φ) sinφ ε^(R/L t)}

   φ = tan^(-1)(ωL/R)

 

ここで,両電流の定常状態(t =を考えると,ε^(R/L t)の減衰項が零に収束して次式となる。

 i_dc(t) = V_S/R

 

 i_ac(t) = V_m/{(R^2 + (ωL)^2)} {sin(ωt tan^(-1)(ωL/R))}

 

(2)交流回路における電流振幅と位相

上記各電流波形を比較して考察してみよう。

直流回路の場合には定常状態ではコイルの影響は無くなってオームの法則に従い V_S/Rの一定値に収束する。

一方,交流回路の場合には,電源電圧と同様に sinωtの時間関数となっており,電圧と電流の違いはその振幅(1/{(R^2 + (ωL)^2)} )と位相(φ= tan^(-1)(ωL/R):遅れ)である。

 

【さらに理解を深めよう】

直流電圧(v_dc(t) = V_S)は,交流電圧(v_ac(t) = V_m sinωt)に対して

 角周波数を零(ω = 0)として,その最大振幅を等しくしたもの(V_S = V_m

と考えれば,(5.5)式の電流はそれぞれ等しくなることが分かろう。

 

 

5−2 基本的な交流回路の定常電流

(1)電流波形の仮定

【例題5−1】から分かるように,どうやら交流回路の定常状態はsincosの合成によって解析できそうで,いちいち微分方程式を解いてt =とする必要はないようである。

 

そこで,前節で解いてみたRL直列回路に対して,電流を次式のように予めsin関数として仮定してみよう。

 i(t) = I_m sin(ωt−φ)

 

上式は,電源電圧が角周波数ωの正弦波であり,回路に流れる電流はその振幅と位相のみが変化するという仮定を用いたものである。

 

(2)正弦関数の合成による定常電流解析

抵抗およびコイルの電圧降下はそれぞれ

 v_R(t) = R I_m sin(ωt−φ), v_L(t) = ωL I_m cos(ωt−φ)

であるから,電源電圧と電圧降下の合計が等しいとして整理すれば次式を得る。

 V_m sinωt = I_m {(R^2 + (ωL)^2)} sin(ωt−φ + tan^(-1)(ωL/R))

 

上式の右辺と左辺を比較すれば,電流の振幅と位相は次のように求めることができる。

 I_m = 1/{(R^2 + (ωL)^2)}, φ = tan^(-1)(ωL/R)位相は遅れ

 

この結果は(5.5)式と同等であり,電流波形の仮定は有効であった。

 

【ここまでの結論】

 1) 電気回路構成によって,電流の振幅と位相が変化

 2) 定常電流を求めるために,煩雑な正弦波の合成が必要

 3) もっとスマートな方法はないのか?

 

 

[レポート課題]

(1) 上記5.1のRL直列回路に交流電圧 v_ac(t) = V_m sinωtを印加した場合の電流 i_ac(t)に対して,V_m = 141 Vω = 2π60 rad/sR = 20 Ω,L = 30 mHとして,電圧・電流波形をグラフに描きなさい。

(2) 例題5−1

(3) (5.9)式から(5.12)式までを導出しなさい。

(4) 課題5−1の表を,途中の導出式を示して埋めなさい。